#036 長浜はアメフトの聖地だった!地域の未来を照らすアメフトの派生スポーツ「フラッグフットボール」をご紹介!

フラッグフットボールの試合

滋賀県長浜市はアメリカンフットボールを日本で最初に始めた「アメフト発祥の地」です。
1950年に長浜市立南中学校で初めて部活動にタッチフットボールが取り入れられたのをきっかけに、日本中にアメフトが広がりました。

「甲子園ボウル」「ライスボウル」に次ぎ、日本で3番目に古いアメフトの大会「長浜ひょうたんボウル」が毎年開催されるなど、地域にはアメフトの歴史と文化が根付いています。

そんなアメフトの聖地ともいえる長浜で、アメフトの特徴はそのままに、安全性を高めたスポーツ「フラッグフットボール」が新たに盛り上がりをみせています。

フラッグフットボールってどんなスポーツ?アメフトとどこが違うの?
そんな疑問を解決するため、長浜を拠点に活動するフラッグフットボールの小学生チーム『長浜HEROES(ヒーローズ)』を取材してきました!

アメフトの安全版スポーツ「フラッグフットボール」

フラッグフットボールの試合

アメリカンフットボールの面白さといえば、強靭な身体の男性が、防具を付けて激しくぶつかり合うタックル!

それに対してフラッグフットボールは、アメフトの基本的なルールをベースに、選手同士のコンタクト(身体的接触)を原則禁止(反則)とすることで、安全性を高めたスポーツです。
女性はもちろん、小学校低学年の子どもから楽しめる生涯スポーツとして親しまれ、教育現場でも活用されています。

日本での認知度はまだそれほど高まっていませんが、アメリカでは知らない人はいない、というほどメジャーなスポーツで、2028年のロサンゼルスオリンピックで追加競技になるなど、今話題となっています。

フラッグ

フラッグフットボールの一番の特徴は、競技名の由来にもなっているこの「フラッグ」と呼ばれる布。選手が左右の腰にフラッグを着け、試合に臨みます。

フラッグを取る

アメフトでいう「タックル」の代わりに、ボールを持った選手の左右どちらかのフラッグを取ればボールデッド。試合が一時中断されます。
フラッグを取り合うだけでも、鬼ごっこ要素があって子どもたちは十分楽しめます。

足の遅い選手も活躍できる!?戦略的なチームスポーツ

フラッグフットボールを初めて知った!そもそもアメフトのルールもよく分からない!という人のためにもう少しルールをご紹介。

試合

フラッグフットボールの試合は5対5で行います。アメフトの試合が11対11なので、少ない人数でできる気軽さもメリットの一つ。ヘルメットや防具なども必要ありません。
正式なコートの大きさは、25ヤード×40ヤードで、人数や学年に応じてコートのサイズを変えることも可能です。

攻撃のスタート

攻撃のスタートは、オフェンス(攻撃)が、ボールを地面について自分よりも後ろに出すところから始まります。
ディフェンス(守り)がボールを持っている人のフラッグを取れば、その地点で1回目の攻撃は終了。その地点からオフェンス側の2回目の攻撃になります。

試合

ボールを受け取った人は、パスを出すか、ボールを持って走り、コート内を前進!
4回以内の攻撃で敵陣のエンドゾーンまでボールを運べば得点が入ります(タッチダウン)。

小学校低学年チームの試合を見ていても、ボールを持って走る姿はアメフト選手のよう。身をひるがえしながら疾走する姿が様になっています!

作戦会議

そして、なんといっても特徴的なのはこのシーン。
プレーごとに選手が集まってなにやらボードのようなものを確認しています。

実はアメフトやフラッグフットボールのオフェンスは、全て事前に綿密に練ったセットプレーなんです。だから、プレー前にはみんなで次の攻撃の内容を確認することが重要になります。

作戦会議

作戦には、選手それぞれに役割が与えられていて、身体が小さくても、足が遅くても活躍できる場があるのだそう。

激しいぶつかり合いが特徴的で、体格やスピード勝負なのかと思っていたアメフトも、実は頭脳的なスポーツなんですね。

スポーツを純粋に楽しむ『長浜HEROES』

全国的に小学生のフラッグフットボールチームは増えていて、現在国内には約110チームあります。
取材をさせてもらった『長浜HEROES』は、2022年3月に設立。当時は14人だったメンバーも、今では37人と、2年間で倍以上になりました。

茂森尊君

現チームのキャプテンを務めるのは、6年生の茂森尊(たける)君。
体育の授業でフラッグフットボールをする機会があり、面白い!と思ったのが、チームに入るきっかけだったと言います。

「長浜HEROESは、仲良く、ポジティブなチーム。みんなで取り組むチームスポーツだから、団結力がすごく強くなってきた」と尊君。
冷静にチームの状況を把握する、頼れるキャプテンです。

木口凛ちゃん

「ボールをキャッチするのがいちばん楽しい。初めてクラブ活動に入ったけど、とにかく楽しい!」と満面の笑顔でインタビューに答えてくれたのは、小学4年生の木口凛ちゃん。
メンバーの男女比はほぼ半々で、長浜市や彦根市から通っている子が多いそう。活動は基本的に週に1回。

凛ちゃんは「ボールの網目に指を掛けて投げるので、ドッチボールよりも投げやすいし、キャッチしやすい」と魅力を話します。

小堀友博さん

ヘッドコーチ・小堀友博さんは、長浜西中学校のアメフト部や、長浜北高校、立命館大学、社会人チーム「SEKISUIチャレンジャーズ」のコーチも務めるなど、多世代にわたってアメフトやフラッグフットボールの指導に携わってきたキーマン。

「長浜HEROESで教えるときは、必ず子どもたちの名前を呼んで指導することを意識しています。そして何より、楽しさ重視!悪い部分を指摘するよりも、良いプレーを褒めるようにしています」。

指導者も子どもたちも、笑顔で純粋にスポーツを楽しむ姿が印象的でした。

アメフトのまち・長浜の未来をフラッグフットボールに託して

伊藤和真さん

長浜HEROES代表・伊藤和真さんにお話を伺いました。
伊藤さんは長浜市出身で、学生時代に本場アメリカのNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)にはまり、動画や記事を英語から日本語に翻訳し、ブログで発信するほどのNFL好き。

「ブログを書いていく中で、長浜が日本のアメフト界の草分け的な存在だということを知ったんです。自分の地元のことなのに、全く知らなかった。調べてみると、長浜には昔からアメフトが根付いていて、優秀な選手もたくさん輩出しているんです。でも、今は『アメフトのまち・長浜』が過去の栄光になりつつあって、知らない人も増えてしまっているんです」。

練習風景

その状況に危機感を覚え、長浜を再びアメフトのまちとして盛り上げたいと、アメフト経験者の知人などに声をかけ、小学生のフラッグフットボールチーム『長浜HEROES』を立ち上げました。

「少子化が進む地域では、試合ができるほどの人数が集まらず廃部になる部活やクラブが後を絶たない。でも、フラッグフットボールなら男女混合で、少ない人数でできる。今の時代に合ったスポーツだと思います」と話します。

集合写真

今年から中学生の部も始動予定の『長浜HEROES』。

「5年、10年と活動を続けるうちに、フラッグフットボールが地域のコミュニティになり、長浜のアメフトの文化を知ってもらうきっかけになって、関わる人がもっと増えれば嬉しいですね」と伊藤さん。

2028年に開催されるロサンゼルスオリンピックから競技種目に追加されるフラッグフットボール。
アメフトの聖地・長浜から、次世代を担う“ヒーロー”が生まれるかもしれませんね!

お問い合わせ

長浜フラッグフットボール協会
ホームページ:https://www.nagahama-flag.com/
Instagram:https://www.instagram.com/nagahama.flag/

(文・松本歩/撮影・辻田新也)

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