夏の暑いある日、滋賀にあるアイスアリーナリンクでは、華やかな氷上の舞いが繰り広げられていました。
滋賀県唯一のアイススケート場「木下カンセー アイスアリーナ(滋賀県立アイスアリーナ)」で行われる「げんさんサマーカップ」は、シーズン最初の腕試しとして、坂本花織選手などオリンピック出場経験のあるトップスケーターも出場する夏のビッグイベント。全国から熱烈なファンも駆けつけます!
そんな競技会の様子や、その運営に奔走する人たちの努力を取材しました。
夏の大一番に挑むため、全国から滋賀へ
夏の青空に映えるのは、滋賀県大津市にある「木下カンセー アイスアリーナ」です。
滋賀県唯一の屋内スケートリンクで、フィギュアスケートやアイスホッケー、ショートトラックなど、アイススポーツの普及振興の拠点として、2000年11月にオープンしました。
国際規格に準じた本格的なリンクがあることから、約20年前にここでフィギュアスケートの競技会が開かれたのが「げんさんサマーカップ」の始まりです。当初は、近畿圏内の小中学生のための競技会でしたが、回を重ねるごとに参加希望者が増え、ジュニアだけでなくシニアのクラスにも拡大。
今では全国各地から、200名以上の選手が出場する大規模な競技会となりました。
滋賀県民なら気になるのは、大会のネーミングではないでしょうか。
スーパーでお馴染み、近江牛の老舗「肉のげんさん」がスポンサーになっています。
それゆえ、優勝者への副賞としてげんさんのお肉が贈られます。
お肉を目指して熱戦が繰り広げられるのは、数ある地方大会の中でもここだけです。
取材に訪れたのは大会の1日目。シニア男子のショートプログラム行われていました。
ここから4日間、男女のジュニアとシニアそれぞれのクラスで、ショートプログラムとフリープログラムが行われます。
夏に開かれる地方大会はあまりなく、全日本クラスの審判員やテクニカルパネルも揃う「げんさんサマーカップ」は、多くの選手にとってシーズン初めの貴重な実戦の機会。
過去には宮原知子選手や樋口新葉選手、鍵山優真選手なども出場し、“ミニ全日本”とも称されるほど、トップレベルのスケーターが集います。
会場の外には、大会に協賛するお店が出店し、お祭りのような賑やかな雰囲気。
昨年はコロナ禍で無観客での開催でしたが、今年は連日700人の観客が招待され、大いに賑わいました。
大会運営は二人の肩に
「まさかこんな大規模な大会になるとは思ってもみませんでした」。
そう話すのは、滋賀県スケート連盟フィギュア部長の築山由美さん(右)と、同連盟理事長の小宮山敦子さん(左)です。
自身もスケート競技に打ち込んでいたことから、滋賀のスケートを盛り上げたいと、前身となる小中学生の競技会開催からずっと関わってきました。
ただ、これほどの規模の競技会になった今も、準備はほとんど二人だけでやっているというから驚きです。
「もちろん、大会当日は審判員から運営スタッフまで、みなさんボランティアでお手伝いに来てもらっています。でも、当日までの準備はほぼ私たち二人だけ。大会がこの時期なのは、普段教員をしている私たちが比較的動きやすい夏休みに合わせてるからなんです」。
真夏の大会開催には、こんな事情もあったんですね。
たくさんの人にもっと気軽にフィギュアスケートを楽しんでほしい、そんな思いもあって観客(抽選制)の入場料は無料にしています。
「実は、ここ数年は毎回100万円近くの赤字で…」と苦笑いするお二人ですが、出場を希望する選手や観客の皆さんの後押しで、今年は会場で運営協力金を募ってみたそうです。
「想像以上にたくさん集まって、もう本当に有り難かったです。皆さん快く協力してくれて、がんばってくださいと声もかけてていただいて」。
来年以降の開催を続ける勇気をもらったと話します。
築山さんたちの陰の努力は、観客・選手にもしっかり伝わっているようです。
滋賀ゆかりの選手にも期待!
滋賀にゆかりのある選手にインタビューすることができました。
滑走を終えたばかりの本田ルーカス剛史(つよし)選手です。
出身は兵庫県ですが、綾羽高校在学中は滋賀を拠点とし、国体にも滋賀県代表として出場しました。
「ここは2シーズンほどホームリンクとして使用していて、たくさん成長をさせてもらった思い出あるリンクです。ここで全国の有力な選手と競えるのは、とてもいい刺激になります」。
来年以降、ペアへの転向を発表している本田選手。シングル最後のシーズンを充実させたいと笑顔で話してくれました。
もう一人、滋賀ゆかりの選手をご紹介します。滋賀県在住の小林隼(しゅん)選手です。小林選手は5歳のときに、アイスアリーナの教室でフィギュアスケートに出会いました。昨年は全日本選手権出場も果たしている、期待のホープです。
観客の大きな手拍子に乗って、伸び伸びと滑る姿が印象的でした。
「地元で開催される大会なので、たくさんの声援が大きな力となります。去年の全日本はショートどまりだったので、今年はフリーに進出できるよう頑張りたいです」と力強く今年の意気込みも話してくれました。
滋賀のフィギュアスケートの盛り上がりに向けて
「滋賀の選手にお肉を持って帰ってもらいたいのが本音です」。
冗談交じりにそう話す築山さん。本田選手、小林選手を筆頭に、滋賀の選手が表彰台に立つ日も、そう遠くないかもしれません。
オリンピックなどの国際大会でも輝かしい成績を残している日本のフィギュアスケート界。「げんさんサマーカップ」は、そんなトップレベルの選手たちの演技を間近で見たり、同じリンクで滑って憧れたりできる貴重な機会です。
来年の夏はどの選手が滋賀にやってくるのでしょう。クールなアイスアリーナで、トップスケーターによる熱く華やかな演技をみてみませんか?
お問い合わせ
滋賀県スケート連盟
公式サイト:https://www.shiga-skating.com/
(文・福本明子/撮影・辻田新也)
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